JIJI'S MASTER 慶輔はその古めかしいドアをすこしドキドキしながら開けて中に入った。
ドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ!」
感じの良いマスターがいた。
カウンターにすわりコロナビールを注文した。
とりあえず,
「素敵なお店ですね」
なんてお世辞を言ってみた。
「もう古くてね。」
たしかにちょっとボロイ。
「この窓からの海の眺めはとてもきれいですね。」
おおきな太陽が水平線に沈んでいく。
一人でいるのがもったいないくらいだ。いつもよりビールがうまく感じる。
で,次はジンリッキーを頼んだ。
ライムは生で,甘みのないフレッシュなジンリッキーだ。
これまた爽快。
小さめの音でひかえめにながれるジャズ,コルトレーンだ。
あまりにスタンダードだが,初めての店で聞くには安心感があり,リラックスする。
次はクラッシュアイスでメーカズマーク,気分の良いときはこれが好きだ。
ちょっと飲み過ぎかな。
小さな店全体にマスターの優しさを感じる。
と,マスターがここで働かないかと言う。
「昼間は店の前でサーフィンできるし,君にぴったりだ。」
確かにそのとおりだが,なぜなのか聞いてみた。
もう一つ仕事を抱えていて東京へ戻りたいというのだ。
「君の趣味で音楽も店の雰囲気も好きにやればいいよ。」
そんなこともあるんだ,ちょっと考えてみたりして。
じゃあ,新しいバイトはここのマスター!慶輔はさっそく,住み込みマスター業になり,オーナーは東京へ出かけることになった。
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