FIRST CUSTOMER 慶輔の1日目
さーどうしよう!
何から始めようか。
まずBGMをこれ,ワルツ・フォー・デビイ(ビル・エバンス)にする,これはとても落ちつくんだ。
観葉植物を多めに置いた。
そう,天井にバリみやげの竹の風鈴を付けよう,名前は知らないけど,響きが素敵だ。
店の隅に,所々小さい電球で間接照明を付けた。
メインの照明を暗くして,カウンターにロウソクをともした。
そうだ,香り,カウンターのすみと窓辺にポプリを少し置いた。
森の香りを少々,ちょっと渋く爽やかになった。
と,ドアベルが鳴った。
お客様!
「いらっしゃいませ。」
最初の客は前からの常連らしい。
カウンターの左から2番目の席に迷いもなく座った。
30代半ばってところか。
メニューは見ずに,
「バド」
と,いつもの注文って感じだ。
「おめーが,新しいマスターかい?」
なまった感じで聞かれた。
そういえばオーナーが,このあたりはすごくなまっていると言ってた。
新聞を読みながら,バドは軽く飲み干し,
「ジンリッキーくらっしぇ」
これは‘ください’ということだ。
ライム1/2個スクイザーで絞って,ジン45mlとシェイクして,トールグラスに入れて,炭酸とステアーし,氷を入れる。
我流だが,ライムが効いてとても爽快なはず・・・。
彼はひとくち飲むと「すっぺぇ〜」と言った。
ライム入れすぎたかな,と思ったが,これくらいでいいそうだ。
それ以後,彼はジンリッキーの注文を「すっぺーのくらっしぇ!」と言うようになった。
彼の仕事は住宅設備の営業兼現場が少し,時々この下の海でサーフィンもするそうだ。
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