わたしの街の、わたしのかかりつけ医。
『いつも同じ医者が診る』ということ。
昔から、『かかりつけ』という概念はありましたが、近年、病診連携の名のもと、病院と診療所の役割分担を明確化し、効率的かつ経済的な医療を提供しようという動きが活発になってきております。
『かかりつけ医』は『家庭医』という新しい名称で呼ばれるようになりましたが、本来あるべき姿は少しも変わってはいません。
『総合診療科』という新たな分類をされる方もいらっしゃいますが、もともと『かかりつけ医』は初期診療のすべてを担っておりましたから、昔から総合診療をしていたわけです。
では、その違いはどこにあるのでしょうか?
それは、医師の育て方にあります。
昔からの『かかりつけ医』は研修期間にひとつの専門分野を専攻し、その後、『かかりつけ医』となるべく、裾野(専門以外の疾病の診療)を広げていき、ひとりでどのような患者さんにも対応できる最前線の医師をめざしました。
わたしが旧富山町(現在の南房総市)にあった実家の病院に戻るときに、教授から言われた言葉があります。
「初診の患者さんを診察するときには、患者さんを三つに分けろ。
まず、これは自分の専門で任せておけ、と言えるもの、
次に、専門ではないが、研修中に経験を積み、問題なく診療のできるもの、
最後に、まったくの専門外で早く専門医に送った方が良いものだよ。」
では、新しく生まれた『家庭医』はどうでしょう。
彼らは『総合診療科』として、疾病としての専門分野をもたず、浅く広い知識を身につけるように教育されます。
そのため、医師として、経験の浅いうちから多種多様な疾患の診療に当たることになり、時として、専門医が診るべき患者さんを抱え込んでしまったり、未熟な医療を行ってしまう危険性があります。
もちろん、彼らも痛い目に遭いながら、5年、10年もすれば、いっぱしになっていくことでしょうが、それまで、彼らの元を訪れる患者さんはどうなるのでしょうか?
わたしの父は死ぬまで昔ながらの『かかりつけ医』をしており、わたしは彼が残していった患者さんを引き継ぐことから始めました。
ですから、三代、四代にわたって診させていただいている家族もいらっしゃいます。
これくらいになると、その家族の構成、特別な体質や病歴まで周知しており、それが大いに診療の助けになります。
大学医局時代、非常に優秀で何でもできる10年先輩がいました。
彼が医局を辞めて開業する際にわたしに言った言葉があります。
「結局、ぼくは器用貧乏なんだよ。」
わたしも彼と同じなのかもしれません。
でも、わたしはそれでいいと思っています。
わたしは『かかりつけ医』に向いているということだから。
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